2020年4月1日から労働者派遣法が改正されます。
前回は、「労使協定の締結単位」について解説させていただきました。
今回は、「労使協定の労働者代表の選任方法」について解説したいと思います。
労使協定の労働者代表(労働者の過半数を代表する者)の選任方法は、
① 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者ではな
いこと
② 労使協定をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等
の民主的な方法による手続により選出された者であって、派遣元事業主の
意向に基づき選出されたものでないこと
のいずれの要件にも該当する者を選任していただくことになります。
「投票、挙手等」の方法としては、「投票、挙手」のほか、労働者の話し合い、
持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる
民主的な手続きが該当します。
また、①の「労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者
ではない」に該当する者がいない場合、つまり、「その会社又はその事業所に労
基法第41条第2号の管理監督者しかいない場合」は、その管理監督者の中から
投票や挙手等の民主的な方法で過半数労働者の代表者を選任することになります。
この「過半数労働者の代表者の選任」についての注意点は、
① 過半数労働者の代表者は派遣労働者でなくてもいい
② 今回の過半数労働者の代表者は36協定の代表者を据える方法はダメ
③ 過半数労働者の代表者の選任が派遣会社が勝手に選任する等適切に行
われなかった場合は、労使協定の締結が適正に行われなかったと見な
され、その場合は最初から派遣先均等・均衡方式が適用されてしまう。
となります。
①の「過半数労働者の代表者は派遣労働者でなくてもいい」とは、今回の労
働者の過半数代表者の選任は派遣労働者の賃金等に関する労使協定の締結に
伴うものすが、過半数労働者の代表者は必ずしも派遣労働者の中から選ばな
いといけないものではなく、派遣労働者以外の者が過半数労働者の代表者と
なることも問題ありません。
ただし、「投票、挙手等の民主的な方法による手続により選出された者」で
なければいけませんので、会社側が勝手に選任することはできません。
②の「今回の過半数労働者の代表者は36協定の代表者を据える方法はダメ」
とは、殆どの会社で毎年残業時間の労使協定である「36協定」を締結して
いると思いますが、今回の派遣法の労使協定方式の過半数労働者の代表者を
「36協定の代表者と同じ労働者にしておこう」ということで、勝手に36
協定の代表者をそのまま据えることはできません。
もし、そのようなことが後で発覚した場合は、労使協定の締結が適正に行わ
れていないと見なされ、労使協定が初めから無効となり、派遣先均等・均衡
方式が適用されてしまいます。
今回の労使協定方式の過半数労働者の代表者を選任する場合は、「派遣法改
正に伴う労使協定方式に係る労使協定の締結」であることを明らかにしたう
えで、投票、挙手等の民主的な方法による手続を経て、労働者の代表者を選
任しなければいけないのでくれぐれもご注意ください。
ただし、上記の方法により適切な手続きを経た結果、たまたま36協定の代
表者と同じ者だったということは何の問題もありません。要は手続きを適正
に行ったかどうかが重要なのです。
何度も申し上げますが、適切に労使協定の締結がなされなかった場合は、労
使協定が無効となり、派遣先均等・均衡方式が適用されてしまいます。
もしそのようなことになった場合は、最初から派遣先均等・均衡方式に基づ
く手続きを行って、派遣労働者の賃金を一から算定しなおさなければならず、
派遣元・派遣先ともかなりの時間的・経済的負担を強いられることになります。
くれぐれもご注意ください!
(資料)
厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html
厚生労働省 「平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>」
https://www.mhlw.go.jp/content/000469167.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html