令和3年度「職業安定局長通達」のポイント(労使協定方式)(令和2年10月21日公表)

 

令和2年10月21日に厚生労働省から、

「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」

が公表されました。

 

(出典:厚生労働省「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用) 」)

(上記画像をクリックすると厚生労働省のホームページに移動します)

 

これは、労使協定方式を採用する場合における令和3年4月1日からの派遣労働者の

賃金決定の際に適用しなければいけない賃金統計(以下「局長通達(令和3年度)」

とする)のことを意味します。

 

この局長通達は毎年6月~7月頃に公表されます(毎年、数値等が更新されたものが

公表されます)が、今年は、コロナウイルスの関係で10月21日に公表されました

 

この「局長通達(令和3年度)」を運用する際には以下の3つのポイントに気を付け

なけれいけません。

 ① 一般賃金額の変更(別添1、別添2の賃金額の変更)

 ② 通勤手当の額が昨年の時給72円→時給74円に引き上げられました。

 ③ 一般賃金額等の特例適用

 

これらについて解説していきたいと思います。

 

 

 

【東谷解説】

① 一般賃金額の変更(別添1、別添2の賃金額の変更)

 「局長通達(令和3年度)」と「局長通達(令和2年度)」では別添1・別添2

各職種の賃金額が変更になっている職種もあるため、令和3年4月1日以降に有

効期間の開始日となる労使協定では各職種の賃金額を見直さなければいけない可能

性があります。

(殆どの職種で、「局長通達(令和2年度)」の賃金額より「局長通達(令和3年

 度)」の賃金額の方が上昇しています)

(「局長通達(令和3年度)」のそれぞれの職種の賃金額が「局長通達(令和2年

 度)」の職種の賃金額よりも下がっている場合はその職種については改めて賃金

 額を見直す必要はありません)

 ・局長通達(令和2年度) 別添1

   https://www.mhlw.go.jp/content/000526706.pdf

 ・局長通達(令和2年度) 別添2

   https://www.mhlw.go.jp/content/000526707.pdf

 ・局長通達(令和3年度) 別添1

   https://www.mhlw.go.jp/content/000685358.pdf

 ・局長通達(令和3年度) 別添2

   https://www.mhlw.go.jp/content/000685359.pdf

 

 では、局長通達(令和3年度)の賃金額が局長通達(令和2年度)の賃金額より

も下がっている職種については、労使協定の派遣労働者の賃金額も下げていいかと

いうと、

「労使協定方式に関するQ&A(第3集)」(令和2年10月21日公表)

問1-1において、下記のとおり記載されています。

「一般賃金の額と同等以上であれば、労働者派遣法第 30 条の4第1項第2号イに

 直ちに違反するものではないが、非正規雇用労働者の待遇改善という同一労働同

 一賃金の趣旨及び派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理の実施

 という労使協定方式の目的にかんがみて、一般賃金の額が下がったことをもって

 、協定対象派遣労働者の待遇を引き下げる対応は望ましくなく、見直し前の労使

 協定に定める協定対象派遣労働者の賃金の額を基礎として、協定対象派遣労働者

 の公正な待遇の確保について労使で十分に議論することが望まれるものである。

  また、派遣労働者の待遇の引き下げ等、労働条件の変更については、労働契約

 法の規定に従う必要があるとともに、次の点からも問題となり得ることに留意が

 必要である。

  ①  労使協定に定める昇給規定等の内容によっては、協定対象派遣労働者の待

   遇を引き下げることが当該昇給規定等を遵守していないことになり、

   法第 30 条の4第1項第2号ロ又は第3号に違反する可能性があること。

  ②  待遇を引き下げることを目的に、令和2年度の労使協定から局長通達別添

   1と別添2の選択を恣意的に変更することなどは認められないこと。」

 

 要するに、「局長通達(令和3年度)の賃金額が、局長通達(令和2年度)の賃

額よりも下がったとしても労使協定の派遣労働者の賃金額は下げない方がいいで

すよ!もし下げた場合、下手したら労使協定そのものが無効となってしまって、遡

って派遣先均等・均衡方式が適用される可能性がありますよ

とのことです。

 

 ちなみに、局長通達(令和3年度)の賃金額は令和3年4月1日以降に有効期間の

開始日となる労使協定から適用されるため、現在有効中の労使協定には影響しないの

でご注意ください。

 

 

 

 

② 通勤手当の額が昨年の時給72円→時給74円に引き上げられました。

 ①と同じ内容ですが、通勤手当についても局長通達(令和2年度)では時給72円

ったものが、局長通達(令和3年度)では時給74円に引き上げられました。

 月額換算では、

  ・時給72円 → 月額12,480円

   (時給72円×週40時間×52週(1年間の週数)÷12ヶ月)

  ・時給74円 → 月額12,827円

   (時給74円×週40時間×52週÷12ヶ月

      =12,826.6667… → 12,827円)

となるため、通勤手当の上限額を月額12,480円としている派遣元事業

主の方は、月額12,827円まで引き上げる必要があります。

                  

 

 

 

③ 一般賃金額等の特例適用

 これは、厚生労働省から今回初めて示された考え方です。

 局長通達(令和3年度)の本文 第1の5の(1)には、以下のとおり

記載されています。

「5 現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影

  響等を踏まえた取扱い

 (1) 取扱いの内容

     現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済・雇用

    への影響等がある中で、令和3年度に適用する一般賃金の額につ

    いて、令和元年又は令和元年度の統計調査等を活用した数値をそ

    のまま適用した場合には、派遣労働者の雇用への影響が懸念され

    る。

     令和3年度に適用する一般賃金の額については、派遣労働者の

    雇用維持・確保の観点から、労使協定締結の当事者である労使が

    十分に協議できるようにすることが必要である。このため、原則

    として、本通知の第2の1から3までに定める方法により算出し

    た一般賃金の額(以下(2)及び(3)において「一般賃金の額

    (令和3年度)」という。)を用いることとするが、派遣労働者

    の雇用維持・確保を図ることを目的として、(2)に定める要件

    を満たし労使で合意した場合には、4に定める適用日において、

    令和元年7月8日付け職発 0708 第2号における一般賃金の額

    (以下(2)及び(3)において「一般賃金の額(令和2年

    度)」という。)を用いることも可能とする。       」

 要するに、

「新型コロナウイルスで事業の継続自体が厳しい派遣会社もあると思いま

 す。そのような派遣会社については令和3年4月1日以降が開始期間と

 なる労使協定については、一定の要件を満たした場合は、局長通達(令

 和3年度)ではなく、局長通達(令和2年度)の賃金額に基づいた労使

 協定でいいですよ」

ということです。

 

 では一定の要件とは何かというと、以下の4要件となります。

 

 ① 派遣労働者の雇用維持・確保を図ることを目的とするものであって

  、その旨を労使協定に明記していること

 

 ② 労使協定を締結した事業所及び当該事業所の特定の職種・地域にお

  いて、労使協定締結時点で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に

  より、事業活動を示す指標(職種・地域別)が現に影響を受けており

  、かつ、当該影響が今後も見込まれるものであること等を具体的に示

  し、労使で十分に議論を行うこと。例えば、次のイからハまでを用い

  、議論を行うことが考えられる。

   イ 「労使協定を締結した事業所において、労使協定締結時点で、雇

    用調整助成金の要件(事業活動を示す指標が5%以上減少)を満

    たしていること」など、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の

    影響による事業所全体の事業の縮小状況

   ロ  特定の職種・地域におけるこれまでの事業活動を示す指標の動

    向。

     例えば、以下のものが考えられること。

      ・ 「労働者派遣契約数が、令和2年1月 24 日以降、継続的

       に減少していること」

      ・ 「労働者派遣契約数が、対前年同月比で継続的に減少して

       いること」

      ・ 「新規の労働者派遣契約数が、対前年同月比で継続的に減

       少していること」

   ハ  ロの動向を踏まえた令和3年度中の労働者派遣契約数等への影

    響の見込み

 

 ③  労使協定に、一般賃金の額(令和2年度)を適用する旨及びその理

  由を明確に記載していること。理由については、①の目的及び②の要件

  で検討した指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・

  抽象的な理由のみでは認められないこと。

 

 ④  ①の要件に係る派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応

  策、②の要件に係る事業活動を示す指標の根拠書類及び一般賃金の額

  (令和2年度)が適用される協定対象派遣労働者数等を、法第 23 条第

  1項及び第2項の規定に基づく事業報告書の提出時に併せて、都道府県

  労働局に提出すること。

 

 要するに、

 ① 派遣労働者の雇用維持のためやむを得ず局長通達(令和2年度)の賃

  金額を基に令和3年度4月1日以降の労使協定の賃金額を定めることを

  労使協定に記載する

 

 ② 「事業全体の売り上げが5%以上減少していること」

   「〇〇職種(例えば「事務員」等)の大阪府での派遣契約数が対前年

    同月比で継続的に減少していること」

   「上記の動向から令和3年度においても派遣契約数が前年同月比で

    〇〇%減少する見込みであること」

  等について労使で十分に議論する

 

 ③ 労使協定に局長通達(令和2年度)を適用する旨及びその理由を明確

  に記載すること。理由については主観的・抽象的な理由の記載ではなく

  「〇〇職種(例えば「事務員」等)の大阪府での派遣契約数が対前年同

   月比で継続的に減少しており、令和3年度においても派遣契約数が前

   年同月比で〇〇%減少する見込みのため」と具体的に記載すること

 

 ④ 「派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応策」

   「各職種の派遣契約数の減少等の根拠を示す書類」

   「局長通達(令和2年度)が適用される協定対象派遣労働者数」

  等について事業報告書の提出時に併せて、各都道府県労働局に提出する

  こと

  (提出方法については令和2年12月末頃にホームページ等で示すとの

   ことです(厚生労働省「労使協定方式に関するQ&A【第3集】

   問1-7より))。

 

の全てを満たした場合は、局長通達(令和2年度)に基づいた労使協定でも

いいですよ!ということです。

 

 

ちなみに、③ 一般賃金額等の特例適用については、派遣元の法人全体又は

派遣元の事業所全体に特例を適用するわけではなく、派遣契約件数等が継続

的に低下している職種や地域ごとに根拠書類を労働局に提出しなければ適用

できないため、派遣契約件数等が継続的に低下していない職種や地域には当

該特例は適用されません。

 もし、派遣元の法人全体で特例適用を受けるためには、法人全体のすべて

の派遣労働者の職種・派遣先地域において継続的に派遣契約数等が低下して

いることを根拠書類を用いて証明する必要があります。

(局長通達(令和3年度)本文 第1の5の(3)留意点 参照)

 

 

(資料)

 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年6月)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf