令和4年度「職業安定局長通達」のポイント(労使協定方式)(令和3年8月6日公表)

 

令和3年8月6日に厚生労働省から、

「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」

が公表されました。

 

(出典:厚生労働省「令和4年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について 」)

(上記画像をクリックすると厚生労働省のホームページに移動します)

 

これは、労使協定方式を採用する場合における令和4年4月1日からの派遣労働者の

賃金決定の際に適用しなければいけない賃金統計(以下「局長通達(令和4年度)」

とする)のことを意味します。

 

この局長通達は毎年6月~7月頃に公表されます(毎年、数値等が更新されたものが

公表されます)が、今年は、コロナウイルスの影響もあってか少し遅めの8月6日に

公表されました

 

この「局長通達(令和4年度)」を運用する際には以下の3つのポイントに気を付け

なければいけません。

 ① 一般賃金額等の変更(別添1、別添2、別添3、別添4の変更)

 ② 通勤手当の額が昨年の時給74円→時給71円に引き下げられました

 ③ 一般賃金額等の特例適用なし

 

これらについて解説していきたいと思います。

 

 

【東谷解説】

① 一般賃金額等の変更(別添1、別添2、別添3、別添4の変更)

 「局長通達(令和4年度)」と「局長通達(令和3年度)」では別添1・別添2

別添3・別添4の各データの数値が変更になっているため、令和4年4月1日以降

に有効期間の開始日となる労使協定においても賃金額や退職金額の見直しを行う必

要があります。

 ・別添1,別添2

   殆どの職種で、「局長通達(令和3年度)」の賃金額より「局長通達(令和

  4年度)」の賃金額の方が上昇しています。

 ・別添3

   地域指数も多くの地域で変更となっているため、労使協定の賃金額表の計算

  を改めて行う必要があります。

 ・別添4

   「中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」の退職金のデータが平成30年

  →令和2年に変更となっているため、「中小企業の賃金・退職金事情(東京都)

  のデータをもとに退職金制度を作成した事業所は見直しが必要となります。

 

 ・局長通達(令和3年度) 別添1

            https://www.mhlw.go.jp/content/000685358.pdf

 ・局長通達(令和4年度) 別添1

            https://www.mhlw.go.jp/content/000817351.pdf

 ・局長通達(令和3年度) 別添2

            https://www.mhlw.go.jp/content/000685359.pdf

 ・局長通達(令和4年度) 別添2

            https://www.mhlw.go.jp/content/000817353.pdf

 ・局長通達(令和3年度) 別添3

            https://www.mhlw.go.jp/content/000685420.pdf

 ・局長通達(令和4年度) 別添3

            https://www.mhlw.go.jp/content/000817358.pdf

 ・局長通達(令和3年度) 別添4

            https://www.mhlw.go.jp/content/000685361.pdf

 ・局長通達(令和4年度) 別添4

            https://www.mhlw.go.jp/content/000817360.pdf

 

 

 

 では、局長通達(令和3年度)の賃金額が局長通達(令和2年度)の賃金額より

も下がっている職種については、労使協定の派遣労働者の賃金額も下げていいかと

いうと、

「労使協定方式に関するQ&A(第3集)」(令和2年10月21日公表)

問1-1において、下記のとおり記載されています。

「一般賃金の額と同等以上であれば、労働者派遣法第 30 条の4第1項第2号イに

 直ちに違反するものではないが、非正規雇用労働者の待遇改善という同一労働同

 一賃金の趣旨及び派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理の実施

 という労使協定方式の目的にかんがみて、一般賃金の額が下がったことをもって

 、協定対象派遣労働者の待遇を引き下げる対応は望ましくなく、見直し前の労使

 協定に定める協定対象派遣労働者の賃金の額を基礎として、協定対象派遣労働者

 の公正な待遇の確保について労使で十分に議論することが望まれるものである。

  また、派遣労働者の待遇の引き下げ等、労働条件の変更については、労働契約

 法の規定に従う必要があるとともに、次の点からも問題となり得ることに留意が

 必要である。

  ①  労使協定に定める昇給規定等の内容によっては、協定対象派遣労働者の待

   遇を引き下げることが当該昇給規定等を遵守していないことになり、

   法第 30 条の4第1項第2号ロ又は第3号に違反する可能性があること。

  ②  待遇を引き下げることを目的に、令和2年度の労使協定から局長通達別添

   1と別添2の選択を恣意的に変更することなどは認められないこと。」

 

 要するに、「局長通達(令和4年度)の賃金額が、局長通達(令和3年度)の賃

額よりも下がったとしても労使協定の派遣労働者の賃金額は下げない方がいいで

すよ!もし下げた場合、下手したら労使協定そのものが無効となってしまって、遡

って派遣先均等・均衡方式が適用される可能性がありますよ

とのことです。

 

 ちなみに、局長通達(令和4年度)の賃金額は令和4年4月1日以降に有効期間の

開始日となる労使協定から適用されるため、現在有効中の労使協定には影響しないの

でご注意ください。

 

 

 

 

② 通勤手当の額が昨年の時給74円→時給71円に引き下げられました。

 通勤手当については局長通達(令和3年度)では時給74円だったものが、局長通

達(令和4年度)では時給71円に引き下げられました。

 月額換算では、

  ・時給74円 → 月額12,827円

   (時給74円×週40時間×52週(1年間の週数)÷12ヶ月

      =12,826.6667… → 12,827円)

  ・時給71円 → 月額12,307円

   (時給71円×週40時間×52週(1年間の週数)÷12ヶ月

      =12,306.6667… → 12,307円)

となり、じゃあ、「引き下げよう」と思うかもしれませんが、先程の①同様、引き下

げた場合、派遣元にとってデメリットが生じる可能性があるため、現状維持としてお

いたほうが無難でしょう。

                  

 

 

 

③ 一般賃金額等の特例適用なし

 これは、昨年度の局長通達において示された取扱いです。

 局長通達(令和3年度)の本文 第1の5の(1)には、以下のとおり

記載されていました。

「5 現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影

  響等を踏まえた取扱い

 (1) 取扱いの内容

     現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済・雇用

    への影響等がある中で、令和3年度に適用する一般賃金の額につ

    いて、令和元年又は令和元年度の統計調査等を活用した数値をそ

    のまま適用した場合には、派遣労働者の雇用への影響が懸念され

    る。

     令和3年度に適用する一般賃金の額については、派遣労働者の

    雇用維持・確保の観点から、労使協定締結の当事者である労使が

    十分に協議できるようにすることが必要である。このため、原則

    として、本通知の第2の1から3までに定める方法により算出し

    た一般賃金の額(以下(2)及び(3)において「一般賃金の額

    (令和3年度)」という。)を用いることとするが、派遣労働者

    の雇用維持・確保を図ることを目的として、(2)に定める要件

    を満たし労使で合意した場合には、4に定める適用日において、

    令和元年7月8日付け職発 0708 第2号における一般賃金の額

    (以下(2)及び(3)において「一般賃金の額(令和2年

    度)」という。)を用いることも可能とする。       」

 要するに、

「新型コロナウイルスで事業の継続自体が厳しい派遣会社もあると思いま

 す。そのような派遣会社については令和3年4月1日以降が開始期間と

 なる労使協定については、一定の要件を満たした場合は、局長通達(令

 和3年度)ではなく、局長通達(令和2年度)の賃金額に基づいた労使

 協定でいいですよ」

というものでした。

 今回の局長通達(令和4年度)には、この規定は一切記載されていない

ので、上記の「一般賃金額等の特例適用」は昨年度のみということのよう

です。

 ちなみに「一般賃金額等の特例適用」を受ける派遣元は、今年の6月末

までの事業報告書の提出の際に、「労使協定方式における現下の新型コロ

ナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱い

に関する提出様式(令和3年度及び令和4年度共通様式) 」を添付された

と思いますが、令和4年6月末までの事業報告書の提出の際も上記の書類

の提出が必要となります。ご注意ください!

 

・労使協定方式における現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱いに関する提出様式について

 

・労使協定方式における現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱いに関する提出様式(令和3年度及び令和4年度共通様式) 

 

 

 

 

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拙著「労働者派遣契約の結び方」をご購入いただいた方につきましては、令和4年度の労使協定の記載例を税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。

また、令和3年1月と4月に行われた派遣法改正に対応した派遣関係書類も税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。

本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方でも簡単に派遣関係書類(今回説明させていただいた労使協定や個別契約書等)が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただいています。

派遣元の担当者の方や派遣先の担当者の方、社会保険労務士の先生方など派遣業務に携われる方は是非、ご一読ください!

本書は専門書のため、ジュンク堂書店、紀伊国屋書店等の大型書店にてお買い求めいただけます!

 

 

 

(資料)

 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf